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第18回 「災害から企業を守るBCP」 ②

今号では、前号(こちら)に続き、「災害から企業を守るBCP」をテーマに「首都直下地震の被害想定と耐震化」について情報提供を行います。

  • 首都直下地震の被害想定と耐震化

    首都直下地震は南関東地域を震源地とする地震であり、この地域でマグニチュード(以下 「M」) 7クラスの大規模な地震が今後30年間に70%の確率で発生すると予想されていることはニュース報道などでよく耳にしていることと思います。

    しかしながら、その備えはというと、必ずしも十分であるとは言えない状況です。私もその一人であり、「防災の日」には、水・食料、医薬品、衣料品、燃料・バッテリーなどを補充し、家具などの転倒防止状況を確認するなどして備えてはいるものの、まだまだ安心できるというにはほど遠い状況です。

    国は、首都直下地震が起きると、最悪の場合には経済被害が約95兆円となり、国家予算に匹敵する規模になると想定しています。その死者数は最大約2万3,000人にのぼり、その7割に当たる約1万6,000人が火災を原因として死亡するとしています。けが人は約12万3,000人、救助が必要な人は約5万8,000人、避難者数は720万人にも達すると想定しています。

    阪神淡路大震災では、死者数5,488人の内4,330人(78.9%)が自宅で亡くなられました。地震が未明に発生したこと、大半の方が在宅していたこと、火災が比較的小規模であったこと等から、地震直後の家屋倒壊による窒息・圧死が死亡の大部分を占めることになったと考えられています(厚生省大臣官房統計情報部人口動態統計課・発表:『国民衛生の動向』;厚生統計協会、1996年)。

    また、関東大震災や東日本大震災(石巻)でみられたように、地震の発生直後に火災旋風(地震などの自然災害によって炎を伴うつむじ風が発生し、大きな被害をもたらす現象)が発生し、広範囲にわたり焼失することも想定されています。

    国は、建物の耐震化による倒壊防止と火災対策を徹底することで首都直下地震における死者を10分の1に減らせる可能性があるとし、建物の耐震化を推奨しています。1981年以前の旧耐震基準を適用して建築された建物は、震度6弱以上の揺れで約75%が全半壊する恐れがあるため、新耐震基準を適用した建物への建て替えや耐震補強が必要とされています。

    南関東地域では、過去にM8クラスの大規模地震である元禄関東地震(1703年)と関東大震災(1923年)が発生しています。 これらの大規模地震の再来間隔が約220年であったため、次回の大規模地震発生はまだ先のことであるかのように思えるところです。しかしながら、この2つの大規模地震が発生した間には安政江戸地震(1855年)や東京地震(1894年)といったM7クラスの地震が発生していることにも着目する必要があります。

    このように歴史と最新の地球科学による知見にもとづけば、今後30年以内であるかどうかは別としても、ふたたび首都圏で大規模地震が起こる可能性は高いと考えられます。

    このような状況下で、企業には会社の建物や設備などの耐震化が求められますが、あわせて実効性があるBCPの構築に向け、従業員やその家族の住居を含めた安全性の確保を考えていく必要があります。

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