ようやく新型コロナウイルス感染症対策の切り札としてワクチン接種が始まり、集団免疫効果を期待して感染症予防への取組みが進められている最中ではありますが、この感染症対策とは関係なく、我々が暮らしている日本列島は、いつ何時、大規模な自然災害が発生してもおかしくない状況下にあります。ご承知の通り、日本列島における地震発生頻度は非常に高く、あわせて毎年、強大な台風が何度も上陸する状況にあり、これらの自然災害は全国各地で我々に重篤な人的被害と甚大な財産損失を及ぼす脅威になっています。
今号・次号では、「自然災害BCP」をテーマに掲げて、自然災害の脅威に対する中・小規模事業者(以下、中小企業)の防災・減災対策強化にお役立ていただきたいと考える取組みをご紹介しますので、今後、代理店の皆さまが中小企業の自然災害等に対する対策をサポートしていく上でご参考にしていただければ幸いです。
- 中小企業強靱化法成立の背景
国は「国土強靭化」により国民の命と財産を守るための安全・安心な生活づくりとして、防災・減災の取組みを打ち出しています。とくに2011年東日本大震災以降、民間では大企業をはじめとしてBCPへの取組みが行われてきましたが、その後、日本経済を支える大半の中小企業における自然災害等への対応力を強化するために「中小企業強靱化法」が成立しました。
これ以降も、熊本地震、西日本豪雨、北海道胆振東部地震、九州北部豪雨や度重なる大型台風により、人的被害は勿論のこと、企業活動に大きな影響を与える自然災害が全国各地で発生しました。
これらの自然災害が発生した結果、建物・設備等が河川氾濫で水没して使用不能となり、電力供給が途絶して長期間の操業停止となった等、事業中断を余儀なくされた企業が多く見受けられました。
この様な状況下にありながら、自然災害に起因する事業中断リスクに対する保険に未加入である、もしくは保険には加入しているが加入内容が適正でないために十分な補償が得られず、破損した建物や資機材の買い替えや修理に多額の費用を要したという企業が多く見受けられました。
昨今、中小企業では、経営者の高齢化や後継者不足により事業を継続できないことが課題として顕在化しており、これらの課題に対応するべく中小企業の経営力を向上する目的で「中小企業等経営強化法」が制定されました。これに、中小企業の自然災害への事前対策(防災・減災対策)を促進することを法改正により追加する形で、事業継続力の強化を目的とする「中小企業強靱化法」が成立しました。
すでに代理店の皆さまのお取引先である多くの中小企業においては自然災害に対する対応力向上を目的として様々な対策を実施されているのではないかと考えます。その一方、未だに避けることが難しい自然災害に対する防災・減災対応が不十分である中小企業が多いことも事実であるため、この様な場合には、自然災害等に伴う事業中断により生ずるリスクの大きさを改めてご認識頂き、「事業継続力強化計画認定制度」を活用して事業所ごとに具体的な対策の策定に着手されることをお勧めいたします。
- 事業継続力強化計画認定制度
本制度は令和元年7月16日に施行され、中小企業が行う防災・減災の事前対策に関する計画を経済産業大臣が認定し、認定を受けた中小企業には、税制優遇や補助金の加点などの「支援策」*の活用を可能とするものとなっています。
法成立時は融資、信用保険等の支援措置の適用を事業活動に影響を与える「自然災害リスク」のみに限定していましたが、今般、新型コロナウイルス感染症への対応は喫緊の課題であることから、「基本方針」の改正(令和2年10月~)で、支援対象を感染症、サイバー攻撃、その他の異常な現象に直接又は間接に起因するリスクへの想定に拡大して運用することになりました。
本法において損害保険会社は中小企業を取り巻く関係者と定義されており、それぞれの自主的な判断により、中小企業に対して「事前対策の取組状況等を踏まえた、リスクに応じた保険料の設定」や「ハザードマップを活用した災害リスクの啓発やBCP策定等の支援」等、災害対策の普及啓発や支援を実施することが期待されています。
代理店の皆さまにおかれましては、お客様から寄せられる期待の高まりに応じ、ハザードマップを活用して災害リスクの啓発を行うことや企業ごとのリスクに応じて保険設計を行う機会が多くなってきているのではないでしょうか。
支援策* = 「事業継続力強化計画認定制度」の認定を受けた企業に対する支援策
- 防災・減災設備に対する税制措置
- 補助金(ものづくり補助金等)の優先採択
- 連携をいただける企業や地方自治体等からの支援措置
- 中小企業庁HPでの認定を受けた企業の公表
- 認定企業にご活用いただけるロゴマーク (会社案内や名刺で認定のPRが可能)